相模原の浄土真宗のお寺『本弘寺』

住職の法話

タイトル:『己が身にひきくらべて 殺してはならぬ 殺さしめてはならぬ 』(2020年5月 1日)

 5月6日が期限の緊急事態宣言を延期するかどうかを政府は議論しております。東京都知事もゴールデンウイークをステイホーム週間にしてくださいとお願いされています。報道によりますと、人の活動が多いような箇所での人出はかなり減っているとのことですが、大阪府知事が店名公表をし話題になったパチンコ店や、神奈川県知事や周辺市長の発言で話題になり、今現在は人が来なくなりつつあるとのことですが湘南海岸地域での人の密集などが問題になっております。

 パチンコ店に来る人やサーフィンなどを楽しむ人、また逆にこの時期なら空いているだろうと観光旅行をされている人たちは、テレビ局のインタビューで、
「自分は大丈夫だと思っている。」「人に迷惑をかけているとは思わない。」と皆ほぼ同じようなことを答えておられます。どうしてそのようなことを思えるのかが不思議でなりません。

 先日も岡江久美子さんとの大変悲しいお別れがありました。志村けんさんに続き芸能界からお二人目のお別れです。訃報を聞いたときには身体が震えました。
翌る日、夫の大和田獏さんが待つ自宅へ葬儀社の方が岡江さんの御遺骨を抱きながら訪問され、その御遺骨を玄関前において立ち去るという映像を観たときには心底悲しみを感じました。大和田さんも自宅待機中のようでしたから直接手渡されなかったのかもしれませんがショックな映像でした。そしてその御遺骨を胸に抱きながら挨拶をされた大和田さんの言葉には涙が止まらなくなりました。

 志村けんさんも岡江久美子さんも有名人ですから報道され、日本中が涙されましたが、4月29日現在、日本国内で亡くなった方は389名、世界でみますと21万6千人もの方が亡くなっておられます。それだけたくさんのとてつもない悲しみに遇われたご家族がおいでなのです。そのことを考えてもまだ「人に迷惑をかけない」と言えるのでしょうか?
 今月の掲示板には法句経から釈尊のお言葉を引用させていただきました。

「すべての者は暴力におびえ、すべての者は死をおそれる。
 己が身をひきくらべて、殺してはならぬ、殺さしめてはならぬ。」(129偈)

「すべての者は暴力におびえる。すべての生きものにとって生命は愛しい。
 己が身にひきくらべて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。」(130偈)

 目に見えず臭いもしないウイルスを保菌しているかもしれない私たちが、己の快楽に身を任せてあっちこっちと不要不急の外出をすることは暴力ではないでしょうか?
自分は大丈夫だと思っておられる方々は死を恐れてはいないのでしょうか?今生きているこの瞬間が愛おしくないのでしょうか?そんなことは決してないと思うのです。釈尊のおっしゃるとおり、死を恐れ命を愛おしく思っているはずです。
このことはすべての他人にも同じ事が言えるのです。

 そして一番大事なことは「己が身にひきくらべて」というお言葉であります。
自分に身に置き換えて考えるということです。人に殺されてもなんとも思わないでしょうか?人を使って殺させても構わないでしょうか?そんなことはないはずです。人に殺されたくはないし、殺させたくはないはずです。

 想像してください。その日その時その一瞬の楽しみを求めた結果、大事な方を罹患させてしまい、重症に陥らせ、そして死亡させてしまったとしたらどうでしょうか?大切な祖父を、祖母を、父を母を、もしかしたらお子さんやお孫さんを失ったらどう感じるのでしょうか?

 今も病気と闘っておられる皆さん、そして命がけで患者さんを診てくださっておられる医療関係の方々、スーパーマーケットや宅配便で頑張ってくださっておられる方々、本当に有難いと思います。そしてその方々を守っていけるのも私たち1人1人が病気にならないことだと思うのです。己が身にひきくらべ、想像し、1日も早く収束させることができるのは私たちの行動なのです。

 先日芸能人の方が「不要不急の外出が求められている今、それでも外出をしなくてはならない人がいる。私はその人達を守るために外出は控えています。」とおっしゃっていました。頭が下がります。合掌

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