相模原の浄土真宗のお寺『本弘寺』

住職の法話

タイトル:『明日ありと 思う心の仇桜 夜半に嵐の 吹かぬものかは』(2021年4月 1日)

 浄土真宗を開かれた親鸞聖人は治承5年(1181年)満8才でお得度されました。
幼くしてご両親を亡くされ、世は源平の合戦など戦や飢饉があとを絶たない時代になんとも逃れがたい無常を嘆かれ、人はなんのために生き、死んだらどうなるのだろうという素朴な疑問の答えを仏教に求められました。そして後に天台座首となられる青蓮院(しようれんいん)の慈鎮和尚(じちんかしよう)の元に出向かれ、僧侶になるための得度を願い出たのです。
「貴方はまだ若いゆえ大人になってからまた出直してきなさい」とおっしゃる慈鎮和尚でしたが、聖人のなんとも今すぐ得度したいとの熱意を感じ取った慈鎮和尚は得度を許されました。「しかし今夜はもう遅いから明日改めて得度式をしましょう」とおっしゃる慈鎮和尚に宛てて詠まれた詩が今月の掲示板に書かせていただいた「明日ありと 思う心の仇桜 夜半に嵐の 吹かぬものかは」です。

 桜がちょうど見頃らしいので明日にでも桜を見に行こうかななどと思っていても、夜中に嵐が吹いて桜がみんな散ってしまったら後悔してもしきれないではありませんか。という、明日すればいいやと思っていても明日という日が私に訪れると誰が約束してくださるのでしょうか。今すぐ仏門に入らせていただかなくては死んでも死にきれませんという切なるお心を詠まれたのであります。

 この詩を聞かれた慈鎮和尚は幼い少年が「明日はない」と説く仏教の教えをすでに心得ており、しかもこんなに思い詰めているのかと大変驚かれ、異例ではありましょうが夜遅くに得度式をなされたのであります。

 今から20年ちょっと前になりましょうか。ぽっくりツアーという、ここにお詣りしたならば長患いで苦しまずにピンピンコロリでぽっくり逝けるということで有名な寺社仏閣に出向く団体旅行が流行りました。不思議なものが流行るものです。このツアーが流行った頃、事実なのか揶揄した話しなのか真偽の程は分かりませんがこんな話しを耳にしました。いつも楽しく集まっている老人数名のグループの1人がいつまでもこうして元気にピンピンしながら楽しく過ごして、病気などをせずにある日突然ぽっくり逝けたならそんなに幸せなことはないね。と言い出され、そこで仲良しグループはみんなで当時流行っていたバスツアーに参加しました。観光名所に寄ったり、美味しい食事をいただいたりしながら目的地のお寺や神社にお詣りをし、帰路の車中でこれでピンピンコロリと幸せな老後を送れると喜んでいたそうです。解散地にバスが到着してバスから降りる段になって、1人の友人が眠ったまままったく起きないことに気がつきました。みんなで起こしますがいっこうに目を覚ましません。そうです。帰りのバスの中で亡くなっていたのです。そのことに気がついた仲間のひとりが叫んだそうです。
「ぽっくり逝きたいのは分かるけどいくらなんでも早すぎる!」笑い話なら良いのですが、本当ならお気の毒であります。私たちは誰だってピンピンコロリと逝けるならそれが良いと思うことでしょう。しかし実際はそうそう思い通りにはいかないものです。それにピンピンコロリの先になにが待っているのか分からないことはとても恐ろしいことではないでしょうか。

 先日、車でラジオを聞いておりましたら、直したいものというテーマで話しをされていました。ある投稿者の話しが心に深く刺さりました。その方は子どもの頃から学校の宿題は後回しにしてしまいいつもギリギリになって後悔したそうで、それは大人になった今も仕事を先延ばしにし続けて最後に後悔するのだそうです。部屋の片付けも苦手で汚れる一方。片付けよう片付けようと思ってはいるもののそれもやっぱり後回しにしてしまっているそうで、この後回しにしてしまう自分を直したいとのことでした。しかし最後のコメントが「しかし直すのはきっと今ではないのでその時まで待つことにします。」でした。私たちの生き方そのものだと思いました。

 本願寺八代目の蓮如上人は「後生の一大事をはっきりさせなさい」となんどもおっしゃいます。親鸞聖人が思い悩まれたなぜ生きるのか?死んだらどうなるのかをはっきりとさせなさいということです。親鸞聖人が比叡山での20年に及ぶ難行の末にここには自分をすくってくださる教えはないと山を下りられ、法然上人のお導きにより阿弥陀如来の御本願に出会われすべてが解決されました。私たちは阿弥陀如来の本願を一心に信じ、南無阿弥陀仏のお念仏を称えさせていただくことで必ず救われると聖人はお示しくださいました。私たちひとりひとりが後生の一大事を解決させていただくのはいつかそのうちではありません。今この時しかないのであります。日曜礼拝も定例法話もございます。仏法聴聞してください。どうか今こそ後生の一大事をはっきりさせてください。合掌

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