相模原の浄土真宗のお寺『本弘寺』

住職の法話

タイトル:『人生に定年はない』(2020年2月 1日)

人生に定年はない

 1月末に縁あって北陸を旅行する機会を頂きました。宿は石川県でしたが主に観光させていただいたのは、祖父が生まれた故郷であり、祖母が育った福井県でした。
子どもの頃、よく祖父母に連れられて福井県鯖江市を中心として遊びに行ったことを懐かしく思い出しました。

 旅行の2日目に曹洞宗の大本山永平寺さんに参拝させていただきました。
宗派も違いますから今までお参りさせていただいたことはなく初めて訪れることができました。
若い頃、本木雅弘さんが主演なさった「ファンシイダンス」という映画の舞台が永平寺さんで、本木雅弘さんが永平寺の雲水さんとなって修行なさっておられる場面をうっすらとですが思いだし少し興奮しながら寺内を拝観させていただきました。ちなみに永平寺さんで修行されておられるお坊さん方を雲水と呼ぶのだそうです。

 映画の中で毎朝広大な廊下や階段などを大勢の雲水さんが横一列に並んで雑巾がけをなさっている場面があったと記憶しているのですが、とにかく廊下も階段も驚くほどにピカピカでツルツルしておりました。一部スロープになっている場所もありましたがツルツルすぎて危ないと思うくらいでした。実際に危ないからでしょう。スロープには横に溝が掘られていて滑り止めとなっておりました。とにかく本堂やトイレに至るまでどこもかしこも綺麗で素晴らしかったです。

 拝観順路を辿り一通り拝観させていただきまして、出口に近い通路に曹洞宗を開かれた道元禅師のお言葉が並んでおるのを見つけました。
その一番最初に「人生に定年はない」と記されておりまして、本当にその通りだなと思い、今月の法語に使わせていただきました。

 年に数回、高校時代の友人達とお酒を飲むのですが、30代の頃は親の介護の話がよく出ておりました。40代になりますと今度は自分の身体のことについての話題がよく出るようになりました。それが50代になりましたら自分の将来の話しが主な話題になってきました。

考えてみますとあと10年も経たずに定年退職の年齢になっています。
起業して頑張っている友人は「子どもも社会人になったし、家のローンも終わってるし、なんのために働いてるのかよく分からなくなってきたな。そろそろ仕事の量を減らしてゆっくりしようかな・・・」といいます。
これはまだいいほうで、大手企業に就職し部長にまでなった友人は「50才前になると若い部下に部長職を譲って、自分は逆に部下にさせられちゃうんだよね。子供達にお金はかからなくなったけど年収もかなり減っちゃったし、早期退職を希望する同期もずいぶん増えてきたし、自分も辞めちゃおうかな・・・」などといいます。人生50年と言われた時代は遙か昔のことで、現在は人生100年時代などといわれておりますが、実際にはこんな暗い話しばかりが話題です。
まさかこの年齢で老後とか余生なんていう言葉を使う事になるとは思いませんでした。

 そんな時に「人生に定年はない」というお言葉が目に入りました。
その下には『老後も余生もないのです。死を迎えるその一瞬までは人生の現役です。人生の現役とは自らの人生を悔いなく生き切る人です。そこには「老い」や「死」への恐れはなく「尊く美しい老い」と「安らかな死」があるばかりです』と記されておりました。
老後や余生が主な話題となっていたこの時に、なんとも有り難いお言葉でした。なんとも恥ずかしい自分であったのかと思い知らされました。

 私たち浄土真宗の宗祖親鸞聖人も念仏の息が絶えられて90才で往生されるその時まで、たくさんの御著書を何度も手直しされ、私たちの救われる道をお説き続けてくださいました。
今回の旅行でお参りすることはかないませんでしたが、福井県に吉崎御坊を建てられて大勢の方々を教化された蓮如上人も、苦しむ衆生を救いたいとその人生をかけて阿弥陀如来の本願を布教してくださいました。
そのような人生を現役のままに悔いなく生ききられた善知識の方々に恥ずかしくない現役の人生を送りたいものです。合掌

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