相模原の浄土真宗のお寺『本弘寺』

住職の法話

タイトル:『知らず知らずの内に 悪事をはたらき 迷惑をかけている 恥ずかしい私です』(2015年6月 1日)

知らず 知らずの内に
悪事をはたらき迷惑をかけている
恥ずかしい私です


 99才で眠るが如く御浄土へ還られた母親の1周忌を勤められたAさんがしみじみと、母は私にことある毎に、悪いことはするなよ。嘘をつくなよ。迷惑をかけるなよと注意してくれたものです。その時はうるさいなぁと思っていましたが今では懐かしく、有り難く思えるんです。親だからこそ言ってくれたのですね。と語られました。


私も本当にそうですね。私たちは善いことをせよ。悪いことはするな。正直に生きろ。嘘をつくな。人に迷惑をかけずに正しく歩めよと育てられたものですが、この頃私は思うのです。こうした生き方が出来れば立派なことだし、正しいことだとは思うのですが、こうした教育を受けてきましたから


私は世の為、人の為に頑張っている。
私は困っている人がいれば力になってきた。
私は泣いている人がいれば慰め励ましてきた。
私は人様に迷惑をかけるようなことは何一つしていない。


などと力まれるのではないでしょうか。人前では偉そうなことを言っても人が見ていなければ、誰にも分からなければ、悪いことを平気で行い何をするか分からない私ではないでしょうか。
誰も認めてもくれず、誉めてくれる人もいなければ、世の為、人の為に私は頑張ることが出来るのでしょうか。
悪いことはするな。嘘をつくな。迷惑をかけるなと言いますが、仏教では私の身体と口と心で知らず知らずのうちに行っている10種の悪事が説かれおり、十悪とか身口意の三業(しんくいのさんごう)と申します。


身体では
殺生(せっしょう):蝿や蚊でも殺せば殺生です。
偸盗(ちゅうとう):人のものを盗むだけでなく自然界のものでもいただきますの感謝の念がなければ盗みでしょう。
邪淫(じゃいん) :よこしまな行いです。そんなことをしないと言っても心の中はどうでしょうか。


口では
妄語(もうご)  :嘘を言う。
両舌(りょうぜつ):あっちでこう言い、こっちでこう言い仲違いをさせる。
悪口(あっこう) :悪口を言う。
綺語(きご)   :心にもない世辞を言う。


心(意)では
貪欲(とんよく) :むさぼりの心。不平不満の心。
瞋恚(しんに)  :怒りの心。
愚癡(ぐち)   :言うまい言うまいとしても、くどくどと愚かなことを言ってしまう。


 こうして教えられますと、悪いことや嘘をつかずに生きられるのか、知らず知らずの内にどれだけ悪いことをはたらいているのか分かりません。
迷惑をかけるなと言いますが、車に乗れば空気を汚しているのです。
快適な文化生活を誇っていますがどれだけ地球温暖化に貢献しているのでしょうか。これも迷惑なことです。
一日にどれだけのゴミを出しているのでしょうか。それを誰が処理してくださっておられるのか。誰かに迷惑をかけているのです。
寺の境内に近所の猫ちゃんが遊びに来ます。来るのは良いのですがお土産を置いていくのです。大変臭いのです。飼い主の方は寺に迷惑をかけているとは思わないでしょうね。


 私たちは自分では気づかない中に人様に大きな迷惑をかけ、悪事をはたらいているのでしょう。そうした自分に気づかされますと人のいたらぬ点も大きな心で受け入れられると思いますし、人から受ける迷惑も受け入れ、許せる心になれるのではないでしょうか。
人が皆お互いにそうした心で生活が出来れば、穏やかで明るい安らぎの世の中になるのではないでしょうか。合掌

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