相模原の浄土真宗のお寺『本弘寺』

住職の法話

タイトル:『迷わず歩んでと 願いをかけられ 今日も生きる』(2024年3月 1日)

 1月末から2月半ばまで緊急入院となりまして、法話の更新等できずに皆様には大変ご心配をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
また、1月5日に往生された母である前坊守の葬儀の折には酷寒の中、大勢の皆様にご参列賜り誠にありがとうございました。

 先月22日に母の満中陰法要(四十九日法要)をお勤めできることができました。法要後の御斎の席で父から母の遺言がそれぞれの家庭に配られました。私と坊守への手紙には、坊守への感謝の言葉が何度も綴られておりました。そして私へは、私の抱える病気の心配と、これからも阿弥陀如来の御本願をいただきながらお念仏の大道を歩んでほしいと遺されておりました。

 母は子供の頃から苦労の連続でした。祖父と祖母は朝から晩まで日々お寺の雑務に追われていたようで、家庭内のことはまだ幼い母が年下の兄弟たちの面倒を見ながらこなしていました。お金もなく祖父が近所のパン屋さんからいただいてきた食パンの耳を食べて飢えをしのいだなんてこともよく話してくださいました。あるとき、誤って包丁で左手の人差し指をまさに皮一枚残して切ってしまったのだそうです。ともすれば千切れ落ちてしまいそうな指だったのですが、イチゴジャムを塗ったコッペパンを買ってもらってとても喜んだそうです。どれだけ貧しかったのかがうかがえます。短大にまで入れてもらえたのですが、お昼はいつも魚肉ソーセージだけだったことを、当時の先生が覚えておられ、同窓会の時に話してくださったそうです。

 そんな中、本弘寺の跡取りと御檀家の皆様にも大変大事に育てていただいていた弟が、今でいうところに医療ミスにより4歳で亡くなられてしまい、母は短大を中退して父との結婚となったのでした。この後のことは私の記憶では、父や子供たちと仲良く家族生活を送っていたと思います。

 父は結婚後、日曜礼拝を開催するようになりました。毎週日曜日の朝8時から様々な年齢層の人たちが集まってこられ、一緒にお勤めをし、法話を聴き、その後の座談会では皆さんからの疑問などが活発に発表され大いに盛り上がりました。それだけではなく仏教青年会や勉強会なども開催し、宗教心を大事にするボーイスカウト活動にも力を入れて、日々仏法興隆に尽力されました。

 幼い頃から祖父からことあるごとに親鸞聖人のお話しや阿弥陀如来のお話しを聴かされて育った母ですが、結婚後も父の法話に耳を傾ける日々を送り、なんとも穏やかで人の悪口など言わない、私たち子供から見ても、誠にお手本とするべき人でした。

 そんな母に育てられた私もお寺の手伝いをするようになりましたが、とくに勉強もせず、ふらふらと毎日を過ごしておりました。あるとき、その頃毎月のように仏法聴聞に出かけるようになっていた御本山の特別法座に誘われました。いやいや付いて行ったときに御法話くださったのが以前書かせていただいたと思いますが、三大ジジィのお一人、飯山先生でした。この先生のお話に天地がひっくり返るほどの衝撃を受けた私はそれからも御本山にて聴聞させていただくようになったのです。母のお誘いがなかったなら今の私はどうなっていたのかと思いますとぞっとします。母は私だけではなく、他の兄弟はもちろんのこと、婦人会に来てくださっておられる方々もお誘いして仏法の聴かせていただける場所へは元気に通っておりました。

 しかし、それも間質性肺炎が悪化するにつれて難しくなり、縁のある先生が送ってくださるカセットテープを何度も何度も聴いておりました。寝たきりになってからも、そんな人いるのだろうかと思ったりもするのですがまったく不平不満を漏らすことなくただただ仏恩の深さ有り難さ口にし、ひたすら合掌をしながらお念仏を申しておりました。

 父が毎月、抗癌剤治療のために3日間の入院をするのですが、そのときには長い時間二人で阿弥陀様のお話をさせていただいたものです。とても苦しい呼吸の中、決まっておっしゃるのは、どういうことになろうとも阿弥陀様にお任せするだけです。お浄土へお迎えくださるのだからなんとも有り難いことですといいながら、ナマンダブナマンダブとお念仏を申されていました。

 そんな母からの最後の言葉が「お念仏の大道を迷わずに歩んでくださいね」でした。母が歓び、祖父や祖母も信じ歩まれたお念仏の大道を私も迷わずに歩みたいと思います。そして御本山に奉職して3年目を迎える次男と、この春から御本山に奉職させていただくことが決まった長男と、そして坊守と力を合わせ、母が歓び歩まれたこのお念仏の教えを御門徒の皆様にも歓んでいただけるように尽力し、皆様と一緒に歩んでいきたいと、改めて心に誓いました。私も間質性肺炎が悪化しているようで思うように動けなくなってきてはおりますが、身体が動き、言葉を発せられる間は頑張ってまいりますので、どうか日曜礼拝や毎月8日の定例法座、そして各種法要にお詣りください。共に仏法を語り合いましょう。合掌

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