相模原の浄土真宗のお寺『本弘寺』

住職の法話

タイトル:『世の中安穏なれ 仏の願いと共に』(2020年12月 1日)

 お陰様で去る11月21日毎年恒例の報恩講を無事に厳修させていただけました。コロナウイルスの第3波が起きているとの報道がある中、大勢のご参詣をいただけたことは親鸞聖人のみ教えをよろこぶ方々がたくさんおられることと感動をいただけ、勇気もいただけました。感謝申し上げます。

 法要が終わり一息つきながらインターネットの記事を見ておりましたら、11月21日は一休さんの御命日だという記事が目にとまりました。記事の内容はどうということもなかったのですが、ふと一休さんの最期の言葉と伝わる言葉を思い出しました。

 一休さんは死を目前にして「死にとうない。死にとうない。」とおっしゃられたそうです。このことを知った頃は禅宗の高僧であられる一休さんのことですから深い意味があるのだろうと勝手に思っておりました。「まだまだ悟りの極みにに達していない。あと少し。あと少しで到達できる。今はまだ死ぬわけにはいかない。」そのようなことなのではなかろうか。もしくはとんちで有名な一休さんですからお弟子さんを前にして洒落っ気をだされたのかもしれないななどと思っておりました。

 しかし思いはその時々でぶれるのですが、今現在としましては、本当に死にたくなかったのではなかろうかと思うのです。江戸時代に御活躍されユーモラスな絵で有名な仙厓和尚さんも最期の時にお弟子さんたちから最期の言葉を求められたときに「死にとうない。死にとうない。」と答えられました。さすがに高僧仙厓和尚の言葉がそれでは困ると思ったお弟子さんたちは、もうひとこと求めたそうで、それに応じた仙厓和尚は「ほんまに。ほんまに。」とお答えになりました。一休さんも仙厓和尚もどちらも本心なのだろうと思うのです。親鸞聖人も歎異抄で伝わる「なごりおしくおもえども、娑婆の縁つきて、ちからなくしておわるとき」という言葉を使われておられます。誰だって生きたいのです。死にたくはないのです。

 ただ親鸞聖人は先ほどの言葉に続いて「かの土へはまいるべきなり。」と続けられました。「なごりおしくおもえども、娑婆の縁つきて、ちからなくしておわるときに、かの土へはまいるべきなり。」この娑婆を離れるのは名残惜しくはあるけれど、阿弥陀如来のおわします極楽浄土にすくっていただけるのです。有難いことです。とおっしゃれられたのです。

 親鸞聖人の最期のお姿は曽孫にあたられる本願寺三代目の覚如(かくにょ)上人が著された御傳鈔(ごでんしょう)で伝えられております。少し長いですが引用させていただきます。

「聖人弘長二歳 壬戌 仲冬下旬の候より、いささか不例の気まします。自爾以来(それよりこのかた)、口に世事をまじえず、ただ仏恩のふかきことをのぶ。声に余言をあらわさず、もっぱら称名たゆることなし。しこうして同第八日午時、頭北面西右脇(ずほくめんさいうきよう)に臥し給いて、ついに念仏の息たえましましおわりぬ。時に、頽齢九旬(たいれいきゆうじゆう)に満ちたまう。」

 親鸞聖人は1262年11月下旬に体調を崩されて寝込まれました。それからというもの世の中のことや自分の欲求はまったく口になさらず、ただただ阿弥陀如来の御恩徳の深さを喜ばれ、余計なことは一切いわずにもっぱらお念仏を称えておられました。そして11月28日のお昼頃お釈迦樣が涅槃に入られたときのお姿と同じように頭北面西右脇のお姿で御往生なされました。

 けっして一休さんや仙厓和尚のような生き方、死に方を侮辱しているのではありません。ただ阿弥陀如来の本願を深く深くふたごころなくいただかれた親鸞聖人におかれては、阿弥陀様にすくっていただけることを喜びの中に最期までお念仏をされておられたことに私は深く感動し涙を禁じ得ないのであります。聖人が念仏の大道を歩み始められた後の人生も、すべてが順風満帆だったわけではありませんが、幼少の頃からの最大の悩み、「後生の一大事」の問題を解決なさって生き生きとした人生を張り張りとした日々だったのでしょう。だからこそ最期に臨んでも仏恩感謝のお心で充ち満ちておられたのでありましょう。私もそうありたいと思うのであります。皆様はいかがでしょうか。

 今年の本山御正忌報恩講におかれまして御法主台下の御親教でこのコロナの時代をふまえられて親鸞聖人の遺されたお言葉から「世の中安穏なれ」とのお言葉をいただきました。そしてWithコロナといわれる世の中で私たち門徒においては「With阿弥陀(仏)」が大事なのだとお示しいただきました。コロナウイルスの収束はまだ先でありましょう。そのような中で恐れ嘆いて過ごしているだけではなくいつでも阿弥陀如来が私たちをその慈光で包んでくださっておられることを信じて明るい日々を過ごしたいものであります。合掌

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