相模原の浄土真宗のお寺『本弘寺』

住職の法話

タイトル:『父母の恩重きこと 天の極まり無きがごとし』(2018年7月 1日)

父母の恩 重きこと  
天の極まり無きがごとし


 浄土真宗東本願寺派本山東本願寺で開催されていた聞法塾で先生をしてくださっておられた、私が尊敬している先生に会いにこの6月の末に能登まで行ってきました。元々は御本山に企画していただいて大勢で能登まで行こうとの話しだったのですが、やはり事が大きくなりすぎるとなかなか実行まで行かず、それなら有志だけで行ってしまおうと私が仲間数人に声をかけて総勢9名でお会いしに行って参りました。


 初めて先生の御法話を聞かせていただいたのは今からもう20年以上前になります。初めて聞かせていただいた御法話に涙が止まらず、先生のカバン持ちをさせていただき付き人になりたいとまで思いましたが、そうもいかず今に至っております。


 本来聞法塾とは、普段私たちが御門徒の皆さんに聴聞していただいておる法話を先生の前でお話しさせていただき、先生をはじめ仲間達にアドバイスを受ける場なのですが、今回は私たち東本願寺派がなぜ大谷派から独立したのか、その発端は何だったのかというお話しを当時の現場で先頭に立っておられた先生の口から聞きたいと思っておりましたし、これからの私たちがしなくてはならない、心しなければならない宿題を頂きたいと思ってお話しを聞かせていただきました。


 細かいことまでこの場で書くのは文字数の関係で無理ですが、要は敬うべきものを忘れ、背を向け、排除していく。全体のためという大義を立てつつその実、自分の利益ばかり追求している人の何と多いことかと言うことでありましょう。


 このようなことは、出世間した仏教では本来考えられないことではありますが、釈尊御在世の時代にも釋尊の従兄弟である提婆達多が仏教教団を我が物にしようと企んだことも有名な話しですから、人間の歴史の中で日常的に行われてきたことであり、人間の根性なのでしょう。ですからこのような問題は希なケースではなく、実はどこにでも起こりえることなのだと思います。


 今年だけでも親子の関係について相談に来られた方が何組もいらっしゃいました。大事な方を亡くされた後で仲の良かったご兄弟の間で相続問題が起こり、裁判になるケースもよくあることですが、今年は不思議と相続の問題ではなく、お年を召された親の面倒を誰が見るのかでもめている。またはもめていたというお話しをよく聞かされました。


 あるご家庭では、何でも言い合える信頼ある親子関係であったゆえに時に言い争いのような形になってしまったそうで、それを端から見ていたご兄弟が、ここではお母さんが可哀想だと勝手に連れ出し、連れ出したもののお世話をすることが段々と面倒になってしまい引き取った家で誰も相手をしなくなってしまい、そのことが寂しくてたまらなくなったお母さんが自殺をなさってしまわれたという話しでした。


 また他のご家庭では、息子さんがいらっしゃらなかったお母さんを、嫁に出た長女夫婦が引き取ったそうですが、お母さんが元気だった頃に蓄えておられたお金を勝手に引き出しては使ってしまい、そのお金を使い果たすと、金の切れ目が縁の切れ目とばかりに、うちではこれ以上面倒見切れないからお前が引き取れと妹さんご夫婦に押しつけてきたという話しでした。妹さんご夫婦はたいそうお母さんを大事になさったので結果的にお母さんはそちらの家で幸せに暮らされたので良かったですが、ご姉妹の間では縁が切れてしまったようです。


 どちらもなんとも寂しい話しであります。しかしこれは他人事ではなく、私の心の中にも気付かないだけで潜んでいる心なのかもしれません。


 釋尊は父母恩重経の中で「父母の恩重きこと 天の極まり無きがごとし」とお示しくださいました。両親から受けた恩は山よりも高く海よりも深いと教えてくださっておられます。また、私がここ数か月様々な場でお話しさせていただいている吉田松陰先生の辞世の句にも「親思う 心にまさる 親心」とあります。
私たちは子供の頃はお父さん、お母さんが大好きで親のお心を信じ、何でも言われたとおりにするよう努力するものですが、段々自我が芽生えてくると反抗するようになり、先の父母恩重経の中に「やがて妻を求めて結婚すれば、父母を疎遠にして近よらず、息子夫妻は部屋で共に語らい共に楽しむ。また兄弟に対しては、怨み憎み嫌う。」とも示してくださっておられます。これは私自身も耳の痛い話しでもあります。


 子供を虐待する大人のニュースも目立つ世の中ではありますが、親から、また他人様から受けた恩を忘れず、心に刻み恩に報いる人生を歩みたいものであります。釋尊は「恩に報えないものは人とは呼ばない。そのようなものを畜生というのだ。」ともお示しくださっておられます。合掌

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