相模原の浄土真宗のお寺『本弘寺』

住職の法話

タイトル:『体の異状は気になるが 心の異状は気にならない』(2009年10月 1日)

充実した悦びの人生は
与えられた道を 信じた道を
怠ることなく規則正しく歩むことです

 秋のお彼岸を迎えても暑さが続き、早く秋が来ないかと心待ちにしておりましたらお中日にはいきなり冬がやってきて戸惑いを感じました。それでも彼岸法要やその後の座談会ではたくさんの方々と法を語り合うことができまして悦びを味わいました。さらに、イチロー選手と白鵬関が私に感動を与えて下さいました。
 イチロー選手はアメリカのマリナーズに入団されてから毎年200本以上の安打を打ち続け、今年の9月23日秋彼岸のお中日には10年連続の200本安打という快挙を成したのです。アメリカ大リーグ100年の歴史の中でシーズン200本安打を10回記録した選手はたった一人しかおらず、10回という記録もさることながら10年連続という記録はイチロー選手以外は誰1人達成していない大記録なのです。イチロー選手の成した偉業は彼のたゆまぬ努力と規則正しい生活にあると思います。
 朝食は常にカレーライスと聞きますし、試合前は何時に食事、何時にストレッチ、何時にバッティング練習を行うという決めたルールは必ず守り、誰よりも早く球場に入り心も体も試合に備えるとのことです。この規則正しい行いはお父さんの教えだそうで「1つの事を続ければ世間から認められるようになる」と言われたお父さんの言葉を素直に聞いて守り続けているのですね。確かに1回2回やることは簡単なことでも、やり続けることは難しいし、やり続ければ何かを得られることと思います。
 お釈迦様のお弟子で自分の名前すら覚えられない愚かな周梨槃特(しゅりはんどく)のことを思い出しますが、彼はお釈迦様から教えられたとおり「塵を払い垢を除かん。」と言い続けながら雨が降ろうが風が吹こうが来る日も来る日も掃除に励み、ついに心に降りかかる塵や垢を払いのけて悟りをひらかれたと言います。やり続けることは大切なのですね。規則正しく1つ事をやり続けるイチロー選手にとって日本のオリックスに入団して仰木監督に出会えたことも大変喜ばしいことでした。
 そして秋彼岸の結願の26日には白鵬関が62連勝で4場所連続全勝優勝を果たされました。彼は15歳で来日し、相撲の入門検査で体重が70キロしか無く不合格でありましたが、宮城野部屋の親方が目を付けて入門させてくれたと聞いております。この親方に白鵬の素質を見抜く目がなかったら今日の白鵬の姿はないのでしょう。今の相撲界は野球賭博、暴力団との癒着、弟子への暴力事件や相撲界全体の体質が問題となり、日本の伝統ある相撲が危機に追い込まれた中で、大相撲という日本の国技、文化をしっかり復活させようという気構えに燃えていたのは白鵬関が一番でなかったでしょうか。
 私はイチロー選手と白鵬関に共通のものを感じます。2人とも人の素質を見抜く監督、親方に出会えたこと。そして2人とも自分が何が何でもナンバーワンになるのだという心ではなく、自分の与えられた道を、自分が信じた道を怠ることなく規則正しくやり続けたと言うことです。その結果が記録更新という偉業を成したのでしょう。記録のために励むのではなく、励んだ後に記録が付いてきたのでしょう。私たちは「他人より優れた技術を身につける」「他人より優れた力を身につける」そのことが成功と考え、他人より優れたものを手にしよう身につけようと苦労し努力をしますが、どれだけ苦労をし努力をしても大病を患ったり、大事故や災害に出会ったり、予期せぬ変化が起こったりするとどうにもならなくなるのです。他人との比較を気にしたり、勝負に執着しないで、私に与えられた道をしっかり歩ませていただくという精神の中に光り輝く悦びの人生が味わえるのではないでしょうか。
 阿弥陀経の「青色青光・黄色黄光・赤色赤光・白色白光」のお言葉の心を深く味わせていただけますと頷けるのではないでしょうか。私たち1人1人がそれぞれ異なった色を持っているのです。私たち1人1人が私の色をそのままそのまま光放せば良いと言うことでしょう。それが私が本当に納得のいく生きる悦びの姿であることを説かれているのでありましょう。他人と比較する必要もない。背伸びする必要もない。偉ぶることも卑下することもない。私は私なりに励ませていただく。それで良いのではないでしょうか。合掌

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